2011年11月

古本市
2011年11月30日

天神さんで一箱古本市

 「天神さん」と言えば京都では一般的に北野天満宮のことを指しますが、同じく菅原道真公を祀り、地元ではやはり同じく「天神さん」として親しまれているのが、長岡京市にある長岡天満宮です。
 そこで先週、11月26日(土)に一箱古本市が開催されました。

 「史上最強クラスの怨霊神・菅原道真のお膝元で開催される古本市ですって!」と、ちのり文庫視点で都合の良い色づけをしながら、意気揚々と行ってきました。

 丹波街道に面した大鳥居をくぐると、すぐ目の前には八条が池が広がります。
 この一帯にはキリシマツツジが植えられており、4月末の開花時期には眼前にびっしりと映る鮮烈な赤を味わうことができます。

 八条が池に掛かった水上橋を渡ると、すぐに見えました。茶屋前の広場にて開催されています。

 東京での一箱古本市と比べると、慎ましくこぢんまりとした印象。
 しかしながら、そこに店を構えているのは、古本ソムリエこと山本善行さんによる「善行堂」をはじめ、「古書ダンデライオン」&「古書思いの外」&「はなめがね本舗」の「町家古本はんのき」の皆さん、古本&レコ屋「100000t」から「かじや」さん、ガケ書房の貸し棚でもお馴染みの「ふるほんやロシナンテ」さん&「Traveling Bookstore」さん等々、これからの京都古本シーンを担う新世代オールスターな面々!
 まるで、この近くで発祥した松花堂弁当のような、旬の素材が彩り良くコンパクトに収まった空間に、大変贅沢な気分を堪能しました。
 
 帰り道には、道路にはみ出さんばかりの均一箱が痛快な「ヨドニカ文庫」や、コミック・同人誌の品揃えで一乗寺店とはまた違った魅力のある「恵文社 バンビオ店」にも立ち寄ることができ、満足感にひたりながら長岡京を後にしたのでした。

『食卓のつぶやき』池波正太郎(主宰の「榊翠簾堂」さんの箱で)
『旅は俗悪がいい』宮脇檀(「あまやかん」さんの箱で)
『ヴィーナスのえくぼ』田中小実昌(「古書ダンデライオン」さんの箱で)
『アダルトビデオ革命史』藤木TDC(「かじや」さんの箱で)
『鎌倉ふしぎ話』東郷隆(帰りの「ヨドニカ文庫」で)
『女囚霊』加藤山羊(帰りの「恵文社 バンビオ店」で)

(京都)


怪談
2011年11月6日

ウルトラマンの怪談

 国民的特撮ヒーロー「ウルトラマン」の原型は「ベムラー」というモンスターで…、という誕生秘話は、ファンにはよく知られたエピソードです。
 ただ、その片隅に、ある女の幽霊が鎮座しているという不気味な裏話は、あまり知られていないかもしれません。
 これは都市伝説の類いではありません。ウルトラマンの生みの親として知られる脚本家・金城哲夫氏がまさにウルトラマンを生み出さんとしていた場所で発生し、その場に居合わせたもう一人の脚本家本人が語った実話怪談としてこの本に残されています。

『怪談 – 幻妙な話』山田正弘(二見書房・1992年)

 日本初の特撮シリーズ『ウルトラQ』の放送開始を半年後に控えた昭和40年・初夏。ヒット確実と見込まれていた『ウルトラQ』に続く新たな企画「ベムラー」を練り上げるため、金城哲夫と山田正弘は祖師谷の古びた旅館に籠っていました。
 ある日、ふすまを隔てた隣室に青い服を着た女性客がひとりで宿泊していることに気付く二人。
 「つまりね、妻子ある男とただならぬ関係になったのだが…」などと事情を探っては、むさくるしい男部屋での清涼剤のようにその存在を楽しむのですが、それも束の間、深夜に女の部屋からすすり泣く声〜恨み言が聞こえてくると、部屋の空気は一変して重苦しい不穏さを帯びてきて…。
 
 言うまでもなく、その女はこの世の存在では無いことが分かります。
 ウルトラマンのイメージカラーである赤とのコントラストをなんとなく頭の中に描くからでしょう、ふすまの隙間から見える女の青色の服が、怪異そのものよりも非常に鮮烈な印象を残す一編です。
 生まれたてのウルトラマンにすうっと触れていった「青衣の女」。シリーズ45周年となった今でも、怪獣と戦うウルトラマンの背後にぴったりと寄り添い、そのコントラストを維持しているのだとしたら…。
 …そんなことを想起させ、ウルトラシリーズに幽霊の姿を焼きつける、ファンにとっては非常に罪深い話なのかもしれません。
 
 さて、この山田正弘氏、霊的にかなり「引きが強い」です。脚本を担当した吉田喜重監督『エロス+虐殺』にまつわる怪異譚や、強力な霊能力を持った「カムイ夫人」なる人物のエピソードなど、興味深い怪談話が多く詰まっており、ウルトラマン方面に力点を置かずとも楽しめます。改題された文庫版を圴一棚でよく見かけるので、そちらでどうぞ。

『私が遭遇した都会(まち)の幽霊』山田正弘(二見書房・1994年)

(京都)